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便秘と排便

便秘と排便04:慢性便秘と下剤依存症にご用心

 ここでは、慢性便秘のメカニズムと下剤依存症について紹介をさせていただきます。

●便秘01(まず知っておいて欲しいこと)
●便秘02(女性と便秘の深〜い関係)
●便秘03(元気なウンチとは?) ●便秘04(慢性便秘と下剤依存症にご用心)
●便秘05(便秘を改善し、排便力を付ける方法)

慢性便秘の原因と負のサイクル

あなたの便秘はどのタイプ?

 もう一度確認をしておきますが、ここで取り上げている便秘は一般的に最も多く見られる慢性便秘の中でも機能性便秘と呼ばれるものです。さらに、機能性便秘には、3つのタイプがあります。

  • 弛緩性便秘:

 加齢などに伴い大腸全体の運動機能が低下し、お腹の張り感を感じるがウンチを押し出せないために排便できない。


  • けいれん性便秘:

 ストレスから大腸が過敏になり便秘と下痢を繰り返す。過敏性腸症候群(IBS)とも言われます。


  • 直腸性便秘:

 いきんでも出ず、強い残便感が残ってしまう。直腸までウンチが降りてきているのに、直腸が鈍感なために便意が起こらない。


 便秘のタイプを知っておくことは、必要な対策を考えることにつながります。自分がどのタイプの便秘で困っているかを知っておくのは後々役立ちますよ。これら以外の急性の危険な便秘や(生まれつきの)身体の構造異常による便秘などについても知っておきたい方は、『便秘/e治験ドットコム』なども参考にしてみて下さい。

 また、直腸性便秘については、『スーパー便秘』という表現でNHKの『ためしてガッテン』でとても参考になる特集を以前にやっていました。詳しく知りたい方は、『頑固な便秘が治った!腸スッキリ最新対策術』をご確認下さい。

便秘が慢性化する原因とその悪影響

便秘がちな方、肉類が多くはありませんか?  便秘が慢性化・悪化する原因や理由も様々なものがありますが、主なものには

  • ・ウンチを我慢する
  • ・加齢による筋力と腸の弾力性の低下
  • ・運動不足
  • ・偏った食生活や不規則な生活
  • ・肉体的/精神的なストレス

などがあるかと思います。

 そして、便秘が慢性化することによる悪影響としては、

  • ・肌のトラブル
  • ・下剤依存
  • ・便意を感じなくなる(下剤依存の副作用として)
  • ・痔

 水分が少なくなった硬いウンチを無理やりいきんで出そうとすると、
肛門の内側が切れてしまい『切れ痔』になってしまうのです。

  • ・大腸がん

 ウンチが溜まりやすい直腸とS状結腸は好発部位となっており、
何とその割合は7割以上にもなります。

などがあります。

 たかが便秘と侮ることなく、問題の切り分けとしてここでも大切なこととして、中等度以上の慢性便秘の方は、大腸内視鏡検査を一度受けられることをおすすめします。

 食生活の欧米化により大腸がんの死亡率は年々高まっており、特に女性のがん死亡原因の1位になっていることには十分ご注意下さい。
(※参考情報:『大腸がんの現状』

下剤(便秘薬)と下剤依存(便秘薬依存)の副作用

自分が使っている下剤(便秘薬)はどのタイプ?

 ここでは、便秘とは切っても切り離せない関係とも言える下剤(便秘薬)について少しまとめておこうと思います。下剤(便秘薬)には大きく分けると2つのタイプがあります。一つは腸を刺激して排便を促すタイプの下剤(刺激性下剤と呼ばれる)。もう一つは、便のかさをふやしたり柔らかくすることで排便しやすくなるタイプの下剤です。

  • 刺激性下剤:腸の粘膜を刺激して排便を促すもの。

 作用が強くすぐに効果があるが、長期間使用すると習慣性や依存性の問題も生じやすいと言われています。アロエの成分などもこの刺激性下剤であるアントラキノン系に含まれます。
(※参考情報:『刺激性下剤の便秘薬と商品名』


  • 機械性下剤:ウンチのもとになるかさを増やしたり、便をやわらかくするもの。

 硫酸マグネシウムや酸化マグネシウムなどの塩類下剤と呼ばれるものもこちらのタイプで、即効性は無いが副作用などは少ないとされています。
(※参考情報:『塩類下剤の便秘薬と商品名』


 もう少し詳しく自分が利用しているものを確認したいのであれば、以下のページが参考になるかもしれません。
(※参考情報:『その他の下剤1(寛腸剤)』
(※参考情報:『その他の下剤2(坐剤)』

 下剤や便秘薬には、病院で処方されるものから市販されるものまで様々ですが、自分が利用している薬が目的にあっているものなのかどうか、また使用方法は正しいのかを含めて上記のリンクなどを参考に一度確認されて置かれることをお勧めします。

安易な利用にご注意を!下剤(便秘薬)も薬。副作用はあります。

安易な下剤(便秘薬)の利用には注意が必要。  下剤(便秘薬)によって異なりますが、副作用の中でも特に注意しておきたいのが、

  • 下剤依存になる。
  • 便意が感じられなくなる。

ということです。

 下剤の安易な利用が長期化すると・・・
やがては腸の機能は衰えて、自然な便意を感じられなくなってしまうのは目に見えています。便意を感じられない、つまり内臓感覚が鈍ってしまうために、重症の便秘となり、ますます下剤が手放せなくなるという悪循環が始まってしまうのです。
 筋肉も使わなければ衰えるように、薬に依存しきってしまうと、排便力さえ衰えてしまうのです。

 これ以外にも下剤を利用することで不必要にナトリウムやカリウムが失われることによってミネラルバランスに異常が生じることも考えられます。
 ナトリウムは体液の濃度調整と関連していたり、カリウムは筋肉や神経を含めた情報伝達と関連しているために、ナトリウムが失われた場合には、むくみに悩まされ、カリウムが失われることで腸の蠕動運動が弱くなり便秘が悪化するという悪循環などです。

 生物の身体は実に上手く作らそして調整れており、本当に無駄なことはほとんどありません。発熱が免疫力を高めてウイルスと攻撃するためだったり、高齢者の高血圧も血栓を作らないためだったりと。
 下剤を含めて薬の利用を否定するわけではありませんが、薬は人工的に生物の平衡状態を急激に変化させる作用があります。作用がある時には、必ず副作用も伴うことを考えると、必要な時に必要なものだけを最小限度に利用するが原則であり、それ以外の薬の利用は百害あって一利なしだと考えています。
(※参考情報:『下剤乱用脱出への道』

便秘に関する間違った思い込みにご注意

下剤を利用してもダイエットにはならない。  便秘に関連して、こんなふうに考えていませんか?

  • 下剤(便秘薬)を利用するとダイエットになる。
  • 食物繊維をとるために玄米を食べる。
  • 水をたくさん飲むとよい。

 何だか便秘の改善によさそうなものもありますが、必ずしも適切だとは言い切れない部分もあるので十分に注意が必要です。その理由は以下の通り。

下剤(便秘薬)を利用してもダイエットにはなりません!

 これなどは、常識であり、問題外などというと怒られるかもしれませんが、消化の過程で栄養分などは大腸に届くまでに小腸で既に取り込まれているので、下剤(便秘薬)を利用して大腸を刺激したり、ウンチのかさを増やしてもダイエットにはなりません。
動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか (※ここでは詳しくは述べませんが、『なぜ太るのか?』、『食べ物はどのように身体の一部になるのか?』については、『動的平衡』などを参考にされると本当に目が覚めると思います。おすすめします。)

胃腸が弱っている状態では玄米は逆効果!

 食物繊維が豊富な玄米は、便秘に最適と一般的には思われていますが、慢性便秘で大腸の働きが弱っている場合や直腸が鈍感になってウンチを押し出せないような場合には、逆効果になるので注意が必要です。
 玄米を含めてたとえ食物繊維が豊富な食物であったとしても、便秘の症状が改善過程にあるときや初期症状の時には有効であるが、悪化している時には必ずしも効果的ではないことも知っておく必要があります。

水も確かにとても大切ですが・・・

水も確かに大切です。  便秘の時には水をたくさん飲むこともなんだか便秘には良さそうですが・・・。
 確かに便秘がちな人の大腸では、便が停滞しがちなために便の水分も少なくなりウンチとして出しにくくなっているということも考えられます。しかし、そのために多くの水分を摂ったしても、その大部分は胃や小腸で水分は吸収されてしまうために大腸までは届かないのです。

 ということで、必ずしも一般的に便秘に良いとされるようなことでも、効果がなかったり逆効果になることもあるのでくれぐれもご注意下さい。

 便秘のページもいよいよ次が最後です。
 次は、『便秘05(便秘を改善し、排便力を付ける方法)』へお進み下さい。

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