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自宅出産の思い出

はじめに

 2010年8月におかげさまで無事に自宅出産で娘が産まれました。
 自宅出産の体験レポートとして思い出を書き残しておこうと思います。
 これから自宅出産や助産院でのお産を考えておられる妊婦さんやパートーの参考に少しでもしていただければ何よりです。

自宅出産に決めた理由

 一人目の長男は助産院で産まれました。実は既にそのころから男の私が『自宅出産』という希望を持っていたのですが・・・
(※参考:『助産院でのお産の思い出』)

 一人目のお産の時に、『自然なお産って何だろう?』と思いながら、自分なりに(もちろん妻は妻なりに)情報収集を行いました。それ以来、産まれることと死ぬことは、生命の自然な営みであり、病院が主体となって『生』と『死』を管理するような現在の一般的なあり方に疑問を持つようになりました。
(※ただし、ここでくれぐれも注意していただきたいのが、私は『良い/悪い』、『今/昔』などの単純な選択や、『何事も自然が良い』、『昔は良かった』、などという考え方があまり好きではないということです。)

 現在でも自宅出産の割合は0.3%ほどだと言われています。
 既にご存知かとは思いますが、助産院や自宅出産はリスクが高いということや万が一の場合には訴訟問題が付きまとうことなどが繰り返し言われています。最近でも、自宅出産の死亡率の高さについて警告を促すデータもあげられるようになっています。
(※参考記事:『自宅分娩について』

いのちを産む―お産の現場から未来を探る  しかし、それでも自然なお産や自宅出産が良いなと思い続けたのは、『傲慢になり過ぎない思想』『自然の一部として生きること』についていろいろと考えさせられた1冊の本との出合いが大きかったような気がします。

 『いのちを産む/大野明子』

 この本の著者である産科医の大野先生の本は、一人目のお産をする時に知った『分娩台よ、さようなら』に引き続き、二人目のお産準備として読みました。自宅出産に最終的に決めるきっかけになったのは、この本の中で紹介されていた『覚悟を決めた潔い生き方』『自然の中には異常はある』などの思想的な影響がやはり強かったように改めて思います。

 一人目のお産の時もそうでしたが、二人目のお産に関しても最終的には、全て妻が好きなように任せておきました。(お産をするのは、妻なのでやっぱり男の私が口出しするのは、おかしいと思ったので・・・)
 今回、自宅出産を決断してくれたこと、そして貴重な体験をさせてもらったことに関して、本当に妻に感謝をしています。(※妊娠期間中やお産時、そして今もしっかりとお兄ちゃんとして振舞ってくれている長男にもありがとう!

まさか自分たち3人だけで!?実際のお産に立ち会って

自宅出産を終え、助産師さんによる健診  実は、今回の自宅出産は助産師さんが到着するまでに娘が産まれてしまったというまさに家族3人(妻、私、そして長男)だけのお産でした。予想外の展開に少しは驚いたのですが、やはり1人目を助産院で立会い出産をした経験が参考になったようで、意外にも冷静に対応が出来たように思います。何事も体験すること、経験することに勝ることはないのでしょうね。

※注意:結果としては、『無介助の自宅出産』になってしまったのですが、助産師さんに頼らない意図的な自宅出産、いわゆる無介助の自宅出産などを計画していたわけではありません。『自然なお産』を大切にしすぎる、ちょっと誤った考え方の人たちの中には、事前の妊婦健診や助産師さんとの連携さえ行っていない場合もあるかもしれませんが、これらの行為は非常に危険です。また、万が一のことがあった場合に、自分達の行為が社会全体に迷惑をかけることがあることを十分認識しておく必要があるように思います。自分達の勝手な行為によって、産科医療崩壊が進まないようにはくれぐれも気を付けなくてはならないように思います。)

 実は・・・、陣痛を感じ始めたので、本番に備えて、いきんだときに赤ちゃんとウンチが一緒に出てこないように、トイレを済ませておこうと思ってトイレに行った時に産まれてしまったようなのです。
 妻の声(「わー、出てきたー」)にビックリしてトイレに駆けつけると、臍の緒でつながった娘が床の上に確かに出てきていました。(便器の中に落ちていなくて、本当に良かった、良かった。ツイてる。ツイてる。)

 娘を拾い上げて、リビングに妻と娘を寝かせて、タオルなどでくるんで暖かくして、お産時に出た血をふき取るなどの後始末をして、助産師さんが到着するのを待ちました。本当に、一瞬というのは大袈裟ですが、あっという間の出来事でした。その後、助産師さんに胎盤取り出しの処理をしてもらったり、臍の緒を切って、ようやくほっと一息つけるようになった感じでした。

自宅出産を振り返って思うこと

 なぜ、助産師さんが到着する前に産まれてしまったのか?

 これが自然なお産を考える一つのヒントになるように思っています。
 というのは、妻の話では、今回のお産は自分で産み落としたという実感がほとんどないほど、本当に赤ちゃんがするりと出てきたというのです。

 お産といえば、ついつい分娩台に横になり、何時間も何十時間もかかる大変な行為であるようなイメージがなぜか未だに付きまとっているように思います。確かに、私の姉の一人目も、親友夫婦の一人目のお産もどちらも病院の分娩台を利用したごくごく一般的なお産だったのですが、それでも24時間以上かかる大変なものだったと聞いているくらい、身近にはまだまだ大変なお産をされている方が多いのもどうやら事実のようです。

 生や死、そして自然を美化するつもりはありません。
 しかし、病院で管理された医療主体のお産のあり方というのは、やはり何か少し違うのではないかな?と感じてしまうのです。(たとえ兄弟や親友といえども、興味がない人に『分娩台を使わない、重力に逆らわないのが自然なお産でおすすめだよ。』などとは言えませんでしたが・・・)

我が家の自宅出産はトイレとリビングで行われました。  本当に自然なお産とは、やはりお腹の中の赤ちゃんが主役であり、お互いに最も負荷かが少なくなるような赤ちゃんとお母さんの共同作業なのではないでしょうか?

 お母さんの身体とココロと頭が十分に柔らかく、しっかりと準備が出来ている時には、赤ちゃんが『するっと出てきた』と表現されるような安産になることが多いのではないでしょうか?

自宅出産は本当に贅沢?

  • 自然なお産や安産には、それなりの努力が必要であること。
  • お産は常にリスクを伴い、生命の営みには異常も含まれること。

 この2つをしっかりと覚悟できている夫婦にとっては、自宅出産は本当に贅沢なものであると思います。なぜって、本当に普段の生活の中に、新しい家族が増える場面があり、お産直後からも家族だけのこれまでどおりの生活が淡々と続けられるからです。
 特に既にお子さんがおられる家庭では、このことを実感されるのではないでしょうか?

 ただし、私たち夫婦のように都会で近くに両親が住んでいない場合や泊りがけで両親が手伝いに来てもらえないような場合には、産後少し大変かもしれません。上の子どもの相手をしながら、食事洗濯などの家事をしなくてはならないからです。
 幸いにも私が自営業で、しかも好き勝手に時間を調整できる状況だったために、産後を何とか乗り切ることが出来たように思います。故に、自宅出産をする場合には、パートナーにも十分な理解と協力が得られること、もしくは、お金を払ってでも産後の家事をサポートしてもらえる体制を十分に整えておくことは、とても大切なことのように思います。

 それと一つ残念だったのは、産後に近くにある2つの保育園のどちらもで定員に空きがないということで、保育園を利用出来なかったことです。豊中市は子育てがしやすい街だとは言われていますが、まだまだ現状は厳しい部分もあることを実感したりもしました。
自宅出産後に子どもたちと (※参考:豊中市には産前産後各2ヶ月保育所を利用できる制度があります。『入所の基準』

 以上は、自宅出産の主役でもなんでもない男の私が、好き勝手に感じたことを書いただけですので、あまり参考にはならないかもしれません。妻は、どんな風に感じていたのかも合わせてご紹介をさせていただこうと思いますので、もしよろしければ、参考にしてみてください。

自宅出産を体験して(妻の感想と思い出)

自宅出産に決めた理由

 私が自宅出産を決めた理由は夫の希望もありましたが、助産師さんの「自宅出産はいいですよ〜、自宅出産で産まれた赤ちゃんは穏やかな子が多いですね。」という一言が忘れられず自分で試してみたいなあという気持ちからでした。

 1人目を助産院で出産したのがとても快適だったので2人目も助産院でもいいなとも思ったのですが、自宅出産でも助産師さんが食事を運んでくれることと、夫が家事育児を協力してくれるとのことだったので、せっかく授かった命を大切にしてお産を迎えてみようと思う気持ちがいつしか強くなっていました。


自宅出産:我が家はこんな感じでした。

 2人目のお産を自宅出産にしてみて、私の場合は結果的にすごくよいお産になりました。家でリラックスしていたせいか、なんと陣痛開始20分後にうまれたのです。
 陣痛が始まったので助産師さんに電話してすぐ駆けつけてもらうことになり、来られるまでにトイレに行ってお通じをすませておこうと思ったら、急にいきみたくなって2度いきんだら何かつるんと出てきて、「しまった、もらしてしまった!」と思って振り向いたらなんと赤ちゃんがおぎゃーと泣いていてびっくりしました。

 夫をすぐに呼び、娘の誕生を喜び合い、バスタオルをとってきてもらい娘を保温し、初乳をあげなきゃとおっぱいをふくませ、出生時刻見なきゃと夫に時間を聞き、我ながら冷静だわ〜と思いつつ娘を抱っこしたまま助産師さんを待ちました。

長男はカッコイイところを見せたかった?  その間に3歳の長男が起きてきて(早朝だったので)最初は床の血を見て、「こわい〜」と走り回っていましたが、すぐに「赤ちゃんだ〜」と言って喜び、自分のおもちゃを手に握らせようとしたり、かっこいいところをみせようと張り切った姿をみせていたのがとても印象的でした。
※注意:お産時には確かに少量の出血を伴いますが、赤ちゃんが血まみれで出てくるというようなことなどは1人目の長男の時にも、2人目にも決してありませんでした。テレビなどの間違ったイメージをもたれませんように!!)

 出産10分後には助産師さんも来てくださったので特に困ったこともなく産後の処置をしてもらいました。

自宅出産にして良かったこと

 自宅出産で一番良かったことは普段の生活の流れの中で自然にお産ができたことです。
 生まれた時もみんなで感動をわかちあい、生まれたその日から家族4人で一緒に過ごせ眠ることができ、しみじみと幸せだなあと感じました。そのせいか長男がすごくスムーズにお兄ちゃんになってくれたように思いました。
 妹がうまれてから少し甘えん坊になることはあっても、今のところ一度もいじめることなく優しく接してくれているのでとてもありがたいなあと思っています。

 もう1つ良かったことがあります。これは、自宅出産とは直接関係無いのですが・・・。陣痛時間が短かったので、おしもの傷がほとんどできなかったことです。1人目のお産の時も陣痛開始後2時間位で産まれて早いほうでしたが、おしもの傷はなかったものの少し充血していたため産後はじめてのお通じは漢方薬を飲まないと出ませんでした。でも今回は痛みが全くなかったので産後の排便も自然にするっと出ました。

 そして自宅出産でうまれた娘は、自宅出産の効果か?それとも親の2人目育児の余裕からか?それとも女の子だからか?わかりませんがとても穏やかにすくすく育ってくれています。まるで『前から私もいたのよ〜』というように自然になじんでいる感じがします。

自宅出産で大変だったこと

 自宅出産で大変だったことは、家にいるためついつい産後動いてしまいそうになることでした。お産がスムーズだったこともあり産後の体力の回復がとてもよかったために、夫が家事育児全般を引き受けて大変そうにしているのを見ると申し訳なく、床上げまで安静にしているのが結構つらかったです。

 でも今となっては夫婦の絆も深まりよい思い出になったなと思います。
 今も本当に夫には感謝しています。

自宅出産を振り返って思うこと

自宅出産は特別なことではないはずです。  今回の自宅出産を経験してみて感じたのは、お産というのは日常生活の一部なんだなあということでした。
 私自身が看護師という職業柄、家で死をむかえることは、とても自然なことだと思っていましたが、家で生まれることもとても自然なことなんだなと身をもって感じました。住み慣れた家で家族に見守られてうまれ、家族に見守られて死ぬこういうことが当たり前だった時代はとても幸せだっただろうなあと思います。

 ただやはり場合によってはリスクも伴うことなのでしっかりとした自己管理をし、どんな事態も受け入れるといった覚悟は必要だと思います。

 これから自宅出産もしくは助産院での出産を望む人がもっともっと増え、自然で幸せなお産が増えていったら女性はもっと幸せになれるんじゃないかなと思います。

自宅出産を考えている妊婦さんとパートナーの方へ

 男性の私がアドバイス出来ることなど、本当は何一つありません。
 それにも関わらず、もし少しでも耳を傾けていただけるのであれば、1つだけお伝えしておきたいことがあります。それは、自宅出産や助産院でのお産に限らず、

  • 自然な安産のためには、それなりの努力が必要

「いのちを産む/大野明子」より

 だということです。
 詳しい具体的な内容などに関しては、大野先生の書籍に書かれているので参考にされると良いかと思います。大野先生は運動と食事を通した自己管理を強調されていますが、私はそれに加えて、きちんとした、または、必要最小限の情報収集と家族の協力が必須だと思っています。

 ただし、くれぐれも間違えていただきたくないのは、妊婦さんの努力やり方です。
 運動と食事の大切さを十分理解されている妊婦さんは多いと思うのですが、頑張り過ぎるとせっかくの努力が逆効果になってしまうことも覚えておいていただければと願っています。

 と言いますのは、頑張りすぎると、身体は緊張してしまい、硬く固くなってしまう気がするのです。緊張が強くて、固くなってしまった骨盤の中では、赤ちゃんだって居心地が悪いだろうと思うのです。赤ちゃんは、やわらかくて、温かいお母さんの身体が大好き。これも頭の片隅に覚えておいていただけると幸いです。
 妊婦さんのやわらかい心と身体作り、大切にしてあげてください。

 創楽カイロ研究所では、妊婦さんのやわらかい身体とココロ作りにも参考になるような『身体と楽を感じる体操教室』も月に1回開催しています。興味を持たれたら、ぜひご参加ください。また、『自然なお産(安産)と子育て応援コース』もありますので、妊娠期間中の体調管理をきちんとしておきたい妊婦さんにはおすすめです。

 自然なお産に取組まれている妊婦さんにお会いできるのを楽しみにしています。   (2011.02)

 ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。

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